まっすぐじゃないけど、今に続く道~美容師だったわたし・後編~

よりみち仕事記録

それでも救われていたのは、一緒に働くスタッフの存在でした。忙しい中でも気さくに声をかけてくれたり、失敗して落ち込んでいるときは、さりげなくフォローしてくれたり。

ある日、私はパーマをかけにきたお客さまにパーマ液をかけてしまうという大失敗をしてしまいました。すごく落ち込みましたが、営業終了後に先輩が「練習すれば大丈夫!」と言ってくれて、その日の夜遅くまで一緒にタオルの巻き方を練習してくれました。

また別の日には、入ったばかりの給料をパチンコとスロットで一晩でほぼ使い切ってしまって(今思えばだいぶアホです…笑)お金も気力も底をついていた状態になりました。そんな私に、先輩が「何やってるのー」と笑いながらも「ごはん、ちゃんと食べなよ!」ってさりげなくお弁当をいただいたり、次の日には、別の先輩からも「これは今日の夕食にしな。」と優しい気持ちがたくさんでした。「ギャンブルでは、よくあることだし自分もこないだ負けたよー」って、笑いながら共感してくてた先輩もいて。これからどうしようと落ち込んでいた私にとって、笑い話にかえてポジティブにしてくれました。

しんどい毎日だったけど、そんな”人のあたたかさ”にふれる瞬間があったから、私はなんとかその日々をやり過ごせていたんだと思います。

でもその一方で、実家からは時々「いつ帰ってくるの?」という連絡が届いていました。忙しさに追われながらも、せめて休みの日くらいはゆっくりしたいという気持ちと、顔をみせてほしいという家族の思い。そのどちらにも応えきれず、心の奥でずっと引っかかっていたんだと思います。やがて、体も心も限界を迎えてしまい、ある朝、どうしても起きることができなくってしまいました。それ以来、美容室にはどうしても足を運べなくなりました。行こうとすると、めまいや気持ち悪くなり家に引き返していました。

体調を心配してくれるスタッフからのやさしいメールにすら、返事をする気力が湧かず、携帯を見ることすら苦しくなっていって。「誰にも会いたくない」「何もしたくない」ーーーそんなふうに、気づけば心はすっかり閉じてしまっていました。

「このままではいけない」と思い、意を決して病院に行きました。最終的には、精神科で見てもらうことになり、当時の私は、自分でもどうしていいかわからない状態でした。診察の中で先生に言われた「原因となっているものをなくさない限り、体調はよくならない」という言葉が、胸にずしんと残りました。それはまるで、自分の中で見ないふりをしていた現実を、はっきりと突きつけられたようでした。

好きだったはずの仕事。目指して頑張ってきた美容師という道。でも、現実の自分には向いてなかったのかもしれないーー。そんな思いが頭の中をぐるぐると回り続け、気づけばどんどん気持ちがふさぎ込んでいきました。

次回、ふさぎ込んでいた日々から、「偶然見つけた一枚の紙から」を書こうと思います。読んでくださりありがとうございます。

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